「好嶼 HOSU」は2022年2月、台北東区にオープン。
好嶼の嶼は島嶼の嶼。すなわち台湾諸島を意味しています。
オーナー夫妻が台湾のあちこちに足を運び、生産者さんから直接話を聞き、自分たちがいいと感じた台湾らしさのある素晴らしい食材を使用し、料理する。
台湾には台湾料理や客家料理、原住民料理など様々なエスニック料理があります。ですがここではカテゴリーにはとらわれず、さらには西洋料理などの技法を活かしながら、それぞれの良さを引き出し、かつ台湾風土とアイデンティティを感じられるような創作コース料理を提供しています。
オーナーシェフのlanさんは30代後半の若手料理人。これまでも自分の店で腕をふるっていましたが、コロナ禍もきっかけとなり自国の良さを改めて見直し注目することで、食材ひとつひとつのストーリーや自分が育ってきた環境を料理に活かしたいとこの店を立ち上げました。
料理の内容は季節ごとに変わり、オープン当時の2月~4月の冬季は「山」、5月~7月の春季は「川」、8月~10月の夏季は「海」、11月~1月の秋季は「原」といったように、台湾の食材の産地でもある「山海川原」をテーマにコースを組み立てています。

場所はMRT忠孝敦化駅7番出口より徒歩約5分。東区はファッションのセレクトショップやカフェ、レストランなど路面店が立ち並び、路地には話題の店も多い地域。昔から台北の流行の発信地などと言われてきましたが、現在もお洒落な若者を中心に街歩きをしている人を多く見かけます。
「好嶼 HOSU」もまた、そんな東区の路地にあり、台湾ではよく見かけるタイプのローカルなアパートの1階にお店を構えています。

お店の前には大きな樹やグリーンが生い茂り、どこか閑静で隠れ家的な雰囲気。
入口前のテラスには大きな木製のテーブルなどもあるので、こちらで食事を楽しむこともできます。

伺った時は秋だったので、テラスでは植物を使用したナチュラルなイメージの空間演出がされていましたが、店内含め、季節と料理のテーマによって雰囲気ががらりと変わります。ひとつ前の牡蠣の殻をオブジェにし、天井から吊るすなど、シーズンテーマである「海」を感じられる装飾でした。

この日の店内は秋色のシックで落ち着いたイメージ。この季節の料理のテーマは「原」。原は台湾の「平原」。台湾でも秋は収穫のシーズン。実りの秋を感じられる装飾で料理を演出しています。
さて、いよいよ料理です。
先にも述べましたが、現在好嶼 HOSUの料理はコース料理のみ。
シーズンごとに内容が変わります。
料金はメインによって料金が違い、今回のコースの場合はビーフを選ぶと2680元(+サービス料10%)、ダッグの場合だと2380元(+サービス料10%)です。
秋季コース「原」の内容は以下の通り。
メニュー表には一皿ごとのタイトルのような料理名と使用する食材が記載されています。

・冷河裡挽褲 Cold River (冷たい川でズボンをまくる)
鰻/青りんご/蕎麦せんべい
レンコン/ハスの実/山芋/スターフルーツ

鰻を青りんごとくみあわせることでさっぱりと。蕎麦せんべいとレンコンはぱりぱり。レンコンの方はほどよい酸味があり、それがいいアクセントになっています。鰻がなぜテーマの「平原」なのかとよく質問されるそうですが、台湾で養殖されているうなぎは海でも川でもなく、やはり「平原」で育ったからとのこと。
・山風裡歌唱 Singing in the Mountain Breeze(山風の中で唄おう)
サワー種の雑穀パン/豆腐乳バター/パセリオイル

台湾ではレストランでもなかなか出会うことのないサワー種を使用した本格的なハード系のパンはこれだけでもかなり美味。豆腐乳のバターはほどよい塩気とクリーミーさが斬新でこんな使い方もあったのかと驚きが。
・茅屋裡的炊煙 The smoke in the thatched hut(わらぶき屋根の家からごはんの煙)
山野菜/大豆/ローゼル/油芒(台湾アブラススキ)

炭火で焼いたという山野菜は季節のものを3~4種類合わせていて、いい塩梅の塩気とスモーキーな味わいが山野菜のワイルドな味わいを引き立てます。豆腐は台東産の大豆を使用した自家製。台湾の豆腐に使用する大豆はほとんどが輸入品ですが、台東産の美味しい大豆にこだわった豆腐は素材のよさがわかる滋味深い味わい。ローゼルの鮮やかでほんのり酸味が効いたソースがよく合います。お皿に散らしてある油芒は日本語だと台湾アブラススキ。原住民が以前お米代わりに食べていたと言われる雑穀で、非常に栄養価が高い台湾独自の食材です。
・早安你這孩子 Morning, my boy (おはよう、うちの子)
ウズラ/えのき茸/万願寺唐辛子

ウズラのビジュアルが日本人にとってはやや衝撃的ですが、香ばしくローストされたチキンといった感じで、お肉も柔らかく、添えられたえのきの食感と唐辛子のソースがアクセントに。この料理はシェフが昔食べていた朝食からインスパイアされたそう。
・靄綠裡的魚兒 Fish in dawn Green (浅緑の中で泳ぐ魚)
マープルゴビー/巨峰/オクラ

マーブルゴビー(筍殻魚)は台湾でいま養殖に力を入れている魚。ダムで養殖しているそう。本来は川魚ですが、臭みもなく、淡白で食感はとろけるようなクリーミーさ。巨峰のフルーティーな香りと淡いグリーンのオクラのソースが美しい一皿。上にトッピングしてあるパリパリのものは濃厚な海苔の風味でこちらもいいアクセントに。
・蘭陽平原的彩霞 Twilight from Lanyang Plain(蘭陽平原の夕焼け)
大根/白海老/タロ芋/山トウキ

運ばれてきた瞬間からエビの香ばしい香りが漂い食欲をそそります。大根は大根餅にしてあり、添えられているのはわかめのソースとチキンのスープ。スープには生薬の山トウキが使用されていますが、漢方臭さなどは感じられず飲みやすい味。大根餅にスープを注いでいただきます。
・樹叢中的鵝 Goose in the Bush(茂みの中のガチョウ)
ガチョウの胸肉/パースニップの根/舞茸/クコの実/春菊/唐辛子

メインのガチョウ肉は皮目がパリっと焼いてあり、肉の部分は柔らかく食べ応えあり。脂肪分が少なく、ヘルシーなお肉として台湾では人気のガチョウ肉。ソースにはクコの実が使われていて、どこか薬膳っぽさも感じられる一皿です。春菊は台湾では茼蒿と言われるもので、日本の春菊のように風味はそこまで強くありません。
・循環裡的牛 Beef in the Loop(循環の中の牛)
アメリカショートリブ/台湾牛タン/さつまいも/カイラン/レッドグァバ
・水雉歸巢 The nest above pool(レンカクの里帰り)
菱の実/イチジク/ロゼワイン
・米香叔叔 Uncle Puffed rice (ポン菓子おじさん)
米/チョコレート/小麦草
・糖葫蘆伯伯 Uncle Candied Fruit (飴りんごおじさん)
柿/甘酒/ヤクルト
シェフが生産地に出向き出会ったという食材は、ひとつひとつにストーリーがあり、どれもその食材をいかにテーマに沿いながらもお客様に楽しんでもらえるのかを突き詰めて考えられているものばかり。まさに一皿ごとにシェフの思いが伝わってきます。
原住民が昔はお米代わりに食べていたという雑穀や漢方に使用されている生薬をソースに使用するなど、普通に旅するだけでは味わうことの出来ない食材と料理の数々は、やはり特別感があり、記憶に残る体験となるはずです。
また、通常はコースのみですが、金土は14:30から夜の営業時間までカフェとしてスイーツなどを提供、そして夜も予約せずに来店した場合などは、1100元(+サービス料10%)で季節のスープ、天然酵母パン、サラダ、麻油鶏リゾットまたはビーフラグーのイタリアンパスタ、コーヒーまたは紅茶、デザートのセットメニューもオーダーできるとのこと。こちらもまた美味しそうです。

<基本データ>
住所:台北市忠孝東路四段181巷40弄14號
(MRT忠孝敦化駅7番出口より徒歩約5分)
営業時間:水木18:00~22:00、金土14:30~22:00
定休日:日月火
電話:02-2711-4723
URL: https://www.facebook.com/hosutaiwan
<1-9号のちょっとひと言>
お洒落なだけではない、シェフの台湾愛が伝わってくる料理の数々は、特にソースの味が印象的でした。酸味がはっきりしていたり、後味に台湾らしさを感じたり、味わいがしっかりしているので、満足感もあります。
洗練されているけれど、どこかほっとする親しみやすさは料理だけではなく、店内もアットホームな雰囲気。気取らずに食事を楽しむことができるのも魅力的。
ホールを担当しているシェフの奥さんのMIKIさんは台湾人ですが日本語も出来るので、そんなところも日本人としては利用しやすいお店です。
(担当特派員:TOP1-9号)
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