「臺灣文學基地」はMRT忠孝新生駅から10分弱のところに2021年1月18日オープンしました。
350坪の広々とした敷地には、7つの家屋があります。齊東舍、悅讀館、繆思苑、文學厝、創作坊、展覽廳と名付けられそれぞれのテーマに沿った展示等を行うほか、和風カフェ「平安京Matcha One」の棟も運営が始まっています。

日本統治時代に宿舎として使われていた日式建築のリノベーション、台湾文学と町の歴史……なんて能書きを聴くと
「はいはい台湾日式、台湾日式!イシキタカイネ!肩コッチャウワ!」
と回れ右する人もいるかもしれません。
しかしこの「臺灣文學基地」はこれまで見て来た(退屈で窮屈でかび臭い)場所とは違っていました。ゆっくり時間をかけて滞在したい空間です。
長い廊下や窓の格子に畳の部屋、綺麗にリノベーションされた清潔な建物の中に、台湾の文学やかつてあった街並の息遣いを感じる仕掛けが置かれています。現代の私達や子供たちにもつながっているかのよう。ここは思ったよりも長い時間を過ごせる場所でした。


小学校の教室を再現した部屋は、台湾の日式建築らしく通気口や出窓が施されていました。レトロな南国調の待合室は、ベンチとハット、小さな鞄で旅の雰囲気。今では貴重なすりガラスに、故郷や恋人を思う詩の一節が書かれています。

日式建築といっても畳の部屋は一部で、大部分がフローリングです。あちこちに椅子が置かれ、物思いにふけったり、本を読んだり、オーディオガイドを聴いて過ごすこともできました。

ちゃぶ台に置かれたメモは、自分の好きな本と、心に残る一節を書き出して紹介するためのもの。書いたらこの部屋の壁に貼り、後から来る人に大切な本の話しを伝えることができます。

かつてあった町や建物も、記憶や記録からは失われていません。
ジオラマやマップで見せる現代の技術が日式建築の中で活用されているのも意外なようでしっくりくる、文學基地ならではの魅力です。

古典的な地図と、タッチ式で動かせるプロジェクション。どちらもアイデアと知識で歴史を伝える熱意が感じられ、子供も大人も熱心に見入っていました。
入場料は無料。失われたと思われた街や文学、書物を丁寧に掘り起こすために、どれだけの尽力があったことでしょう。歴史を知ってと押しつけられるのでも、学習のススメでもない。ただこの文學基地の空間に入ると、静かな声や物語が聴こえてくるようでした。
<基本データ>所在地:台北市中正區濟南路二段27號
(MRT「忠孝新生」駅から徒歩約10分)
電話番号:02-2327-9657
営業時間:10:00-18:00 月曜休
<コーディネーターのちょっとひと言>台北の真ん中、地下鉄駅から歩いてける場所に、よくもこんな広々と清々しい場所が残っているものだと感心してしまいました。昭和前期の陰が強い日式建築の廊下や薄暗い灯りを見ると、曲がり角からスケキヨさんや松子奥様、犬神家の人々が現れるのではと怖気づくことがあります。しかしここは「気」が良いのか、文学の情熱と伊吹が若々しいのか、とても気持ちのいい場所でした。
(担当特派員:TOP33号)
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