「BAR PINE 松」へ行くために、最寄り駅であるMRT信義安和駅の3番出口を出ると、目の前の大きな通り「信義路」からはライトアップされた煌びやかな台北101を見ることができます。
思わずここからも1枚写真を撮りたくなってしまうような、台北らしさをガツンと感じられるエリアです。
1本となりのストリート「通化街」や「臨江街」は夜市もあることから連日賑わいを見せているような場所ですが、「BAR PINE 松」のある文昌街は信義安和駅3番出口から徒歩1分という立地のよさもありながら、どこかひっそりとした静かな雰囲気。
お店の外観も非常にシンプルで目立つ看板などはなく、壁に掲げられた「松PINE」というシンプルなロゴだけが目印です。
照明を落とし、黒を基調としたシックな店内は、台湾でも多くのお洒落なお店の内装を手掛ける「隱室設計」がデザイン。
所々飾られた盆栽や木のぬくもりにどこか「和」のテイストも感じるからか、洗練されていながらも居心地の良さを感じ、まさに大人の隠れ家という言葉がぴったりの空間です。
お店は2022年9月末にオープンしたばかり。
店名の「松」というのは、以前この場所が木材店だったことや、お酒との関係も深い木の樽、そして歳寒の松柏のようなバーテンダーたちの職人精神やもともとこのお店にはアーティストやデザイナーが多くかかわるなどクリエイティブな場所であるというところから、その名がつけらえたそう。
店内はカウンターとテーブル席、入口横には個室も用意されています。
オーナーは日本でも受賞歴のあるフォトグラファーで現在はキューレターやマーケティング会社を経営しているFang Yen Wenさんと、マネージャーでバーテンダーのアリエルさん。台湾の名だたるバーで腕を振るい、カクテルの大会でもトップ4入りを果たすなど、若くして実力派のアリエルさんが独創的で台湾らしさを表現したオリジナルのカクテルを作り出しています。
このお店の素晴らしいところはお酒だけではなく、料理もしっかりと美味しいところ。日本人の感覚だと、バーはちょっと何かをつまみながらお酒を楽しむというような場所ですが、台湾におけるバーは食事もしっかり楽しみながらお酒も味わえるところも多く、Bar Pine松においても、食事メニューにはしっかり力を注いでいます。

料理とカクテルのメニューはシーズンごとにテーマを決めていて、現在のテーマは「菜市場」。台湾の朝の風景でもおなじみ、伝統市場のことです。
野菜に肉や魚、そしてお惣菜をはじめ、食べ物以外にも日用品までもがずらりと並ぶ活気ある風景。台湾人にとってはとても身近でそれぞれにストーリーや思い出もある場所。観光客にとってもぐっとくるのではないでしょうか。
メニューに載っているカクテルはクラシックカクテル20種類のほか、テーマから生まれたシグネチャーカクテルが8種類。それに時折コラボカクテルなどが追加されます。
シグネチャーカクテルの料金はすべて400元。
メニュー写真にあるようにカクテル名はなく、使用されている素材のみが記載されています。
確かに台湾の菜市場に並んでいる食材ばかりではあるのですが、フルーツ以外にも野菜やきのこにお茶、スパイスの他にも味噌やフライドエシャロットのような調味料的な食材もあり、中国語がわかる方はぱっとみてこれがカクテルに?と驚くはず。想像の斜め上をいく組み合わせにバーテンダーの攻めの姿勢をひしひしと感じます。
いろいろと期待値も高まりますが、今回はおすすめのカクテルと料理をお願いしました。
まず最初のカクテルは
「紅心芭樂(ピンクグァバ)/山葵(わさび)/佛手柑(ベルガモット)」

わさび入りのウォッカをベースにピンクグァバソーダの控えめな酸味とまろやかさ、そして佛手柑の爽やかな柑橘系の香りが際立ち、わさびの主張は少な目。適度な甘さとフルーティーな風味についぐびぐび飲んでしまいそうな、非常に飲みやすいカクテルです。
そしてこちらは
「野生山苦瓜/肖楠木(しょうなんぼく)/梅子(干し梅)/柚香金萱(お茶)」

先ほどのカクテルに比べるともう少し複雑な味わい。清酒をベースにふんわりと優しい柚香金萱の香りをつけたスパークリングウォーターとヒノキ科である植物「肖楠木」と干し梅をお酒に漬けたという自家製のリキュールのウッディな香りのバランスが絶妙です。野生山苦瓜は苦みが強めと言われるミニサイズのゴーヤ。少し青みのある風味がアクセントになり、どこかリフレッシュ感もある1杯に仕上がっています。
こちらはアーティストの陳漢聲氏とコラボしたスペシャルシグネチャーの限定カクテル。
「菱角(菱の実) / 香蘭葉(パンダンリーフ) / 乳香黃連木(マスティクス)」

菱角(リンジャオ)も市場や屋台トラックでよくみかける食材で、ピーナッツとともによく売られています。真っ黒の固い殻が不思議な形をしていて、栗のように皮をむいて中の実を食べるのですが、あっさりとしたナッツや栗のような風味です。
「デザートのように最初はスプーンで泡をすくって食べてみて」とのことで、早速そのように食べてみると、ふわふわの泡の中に菱角のナッツのような風味が現れ、確かにスイーツのようなカクテル。液体の部分はパンダンリーフやマスティクス、スキノスのハーブ感のある香りが楽しめ、アジアを思わせるエキゾチックな風味に仕上がっています。
ここからは料理。
「松 起司盤」380元

チーズの盛り合わせ。
チーズの種類は日によって違います。ドライフルーツ、オリーブ、クラッカーなども添えられ、お酒のおともにぴったりです。
「松式烏龍梅子炸雞」280元

どこか日本の唐揚げを思わせるふっくらジューシーな炸雞(フライドチキン)。お肉は柔らかく外はカリっと。烏龍茶と梅を合わせた特製のソースでいただきます。台湾の屋台料理で唐揚げに梅の粉を合わせることも多く、爽やかで酸味のある梅と揚げ物の組み合わせは日本人にとっても親しみやすい味。お酒がすすみまくる一品です。
「鹹豬肉卡布納拉燉飯」350元

鹹豬肉は塩とスパイスに漬け込んだ豚バラ肉をこんがりと焼いた客家料理。これもまた菜市場ではブロックのままどかんと売られているのをよく目にすることができる定番の総菜。松では豚肉を煮込んだ後こんがりと焼き色をつけているので、肉の旨味は残しながらも柔らかな食感が特徴。卡布納拉燉飯とはカルボナーラリゾットのこと。チーズが効いたこってりまろやかなカルボナーラの風味と鹹豬肉の組み合わせは期待を裏切らない美味しさです。
「松 湯一品」1人分180元、3人分350元

飲んだ後にラーメンのような文化は台湾にはないのですが、松さんわかってらっしゃる!と思わず唸ってしまったのがこのメニュー。フォンさんもぜひ〆にとのこと。
こちらは台湾の伝統的な宴会料理「酒家菜」の定番スープ「魷魚螺肉蒜」を再現したスープ。魷魚はスルメイカ、螺肉は台湾エスカルゴ、蒜はにんにくのこと。これに豚肉やしいたけが加わり、素材の出汁がよく出た旨味たっぷりスープ。特にスルメイカの香りが後をひきます。
屋台料理などではあまり出会うことがありませんが、本来お酒の席に合わせて作られたスープ。これをメニューにもってくるところが本当に粋。ぜひとも最後はこのスープで。
<基本データ>
住所:台北市大安區文昌街138號
(MRT信義安和駅3番出口より徒歩約1分)
営業時間:日~木19:00~1:00、金土19:00~2:00(定休日:火)
電話:02-2703-1380
URL: https://www.facebook.com/barpinetw
<1-9号のちょっとひと言>
これはもうお酒が好きで、バーでも台湾らしさを何かしら感じたいのであれば絶対に行ってほしい。雰囲気や味のよさ、ぬかりないセンスの良さ。行ってほしいといいながらも、本当はちょっと教えたくない系のいい店。もしフォンさんがいればきっと日本語での会話も楽しめることでしょう。お酒を愛する気さくな方です。アリエルさんも少し日本語ができ、カウンターに立つ姿は凛としていますが、とても可愛らしくお店のアットホームな雰囲気を作り出してくれています。
平日の開店直後に入りましたが、気がつけば席は埋まっている状態。やはりみなしっかり食べながらお酒も楽しんでいます。
現在のテーマ「菜市場」は3月頃までとのことなので、これらのメニューを味わってみたい方はぜひお早めに。
最低消費金額は平日が400元、休日が800元、+サービス料10%。
予約はオンラインからも可能です。→ https://inline.app/booking/pine/pine
(担当特派員:TOP1-9号)
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