松山文創園區はいつ行っても、何度行っても、同じようでどこかが変わっていると感じます。季節によって木や花も違うし、イベントも入れ替わる。
今年の2月には、池のほとりにカフェ「菸花」がオープンしていました。といっても、外からは見えにくい。かつてタバコ工場だった頃、育児室として使われていた建物「閲樂書店」の中に、控えめなカウンターを構えています。

「菸花」のオーナーバリスタ小高さんは、昨年まで信義路近くでカレーとコーヒーの店「寅樂屋」を営んでいました。美味しくて物語のある素敵なお店が沢山のファンに惜しまれつつ閉店の日を迎える時、
「次はどうするの?どこであなたのコーヒーやカレーにまた会えるのかな」
と尋ねると
「少し休んで、考えるよ」
と笑っていた小高さん。
新しいカフェの名前は「タバコの花」という意味。何もなかった場所に生まれたタバコ工場、その繁栄と衰退。忘れかけられたかつての工場跡地が蘇り、歴史建築として認められ、再びここに花が咲く……そんな時の流れをイメージしのだそうです。
池のほとりに開き始めた静かなカフェで、私のお薦めは「アフォガート/阿芙嘉朵」。
アフォガートは、バニラアイスにエスプレッソをかけたもの。「菸花」では、アルコールいり(350元)とノンアルコール(250元)の2種類を用意しています。
暖かい春の昼下がりですから、せっかくなのでアルコール入りにしてみましょう。「菸花」のアフォガートは、天辺に日本のきび砂糖を散らしています。香り付けには、グラッパ・モンタナロ。中国語で「鶏蛋花」と呼ばれるプルメリアの花の香りがする、イタリアの蒸留酒なのだそう。ほろ苦さと南国の花の甘さが口の中に広がって、蒸し暑い台北の空気にぴったりの味でした。

松山文創園區の素晴らしさは、台北市内の真ん中にありながら、緑の濃いオアシス空間なこと。いつきても、それほど人とすれ違わず、好きな場所でのんびりできます。アフォガートで短い時間、少しだけ酔った気分になれる秘密の贅沢な時間になりますよ。

生チョコレート(150元)は「友達がうちの店のイメージで作ってくれたオリジナル」と小高さん。どこかのお店のショコラティエの方?と尋ねると「Chocoholicって店しってる?あそこのオーナー。」さらっと言われてびっくり。知ってるもなにもあーた、台北にいる「チョコ喰い」で、知らない人はいないでしょう。私がまだ香港で暮らしていた頃、台北に初めて遊びに来た時「えらいこっちゃ、台北にはチョコレート専門のカフェがあるんだってよう」とドキドキしながら入ったのが、永康街の「Chocoholic」でした。カフェ文化は、香港よりも台湾のほうがずっと早くから根付き、リードしていたのです。
「菸花」のために作られたのは、コーヒーにあわせると甘さと深みが引き立つ、大人のチョコレートでした。Chocoholicファンの方も、ここだけの味を調べに来てみてください。
「櫻花草苺烏龍茶蛋糕卷」(230元)は、台湾烏龍茶生地のロールケーキ。烏龍茶は主張しすぎず、コーヒーやカカオ生地よりもおだやかに苺の甘酸っぱいクリームをひきたていました。日本から取り寄せた桜の花の塩漬けもアクセントに。シックで淡い色あいと味わい、台湾だから生まれた優しいお菓子でした。

カフェで注文したものは、書店の中のテーブルやカフェカウンターの裏から続く廊下や表のベンチ、好きな場所で楽しみましょう。小高さんの趣味のレコードの音楽が、さりげなく聴こえて来るかも。裏手の入り口は、誠品松菸に面しています。誠品行旅に泊ってコーヒーやほろ苦くて甘いものが欲しくなったら、「菸花」へそっと降りてきましょう。緑が濃いので虫よけスプレーを準備しておくと、心地よく過ごせますよ。
<基本データ>住所:台北市光復南路133號閲樂書店内(MRT「市政府」駅徒歩8分)
営業時間:14:00-21:00(月・火休)
<コーディネーターのちょっとひと言>松山文創園區は歴史建築や取り巻く緑の公園が見事で、どんな天気の日も気持ちよく過ごせる台北のオアシス。「菸花」のおかげで、台北散歩がますます充実しそうです。
(担当特派員:TOP33号)
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